会社の50歳手前の男性が
「最近、若者の思春期の焦燥を歌った歌詞がやけに心に刺さるようになったんだけど、なんでだろう…」

と仰っていました。
いみじくも「思春期」という単語を使って、今感じている焦燥感を表現されたのですが、大人にも「思秋期」と呼ばれる時期があります。エイジ・クライシスとも呼ばれます。

思秋期とは?心の変化を心理学で読み解く

「思秋期」とは、一般的には中年期(40代〜50代)に差し掛かる頃に感じる、人生の折り返し地点での心の揺らぎや内省を指す言葉です。
秋の訪れのように、人生の成熟とともに訪れる静かな感情の変化、とも表現できるのではないでしょうか。

心理学者のミルトン・エリクソンは、「発達課題」という概念を提唱しました。
人が成長をしていく過程で克服するべき”課題”があり、葛藤や危機的な状況を克服、達成することで獲得していく要因がある、という考え方です。

エリクソンは、人生を以下のような8つの発達段階に分けました。

発達課題年齢心理的課題課題を乗り越えて得られる要素 
乳児期0-2歳基本的信頼⇔不信希望(信頼感、安心感)授乳
幼児期初期2-4歳自律性⇔恥・疑惑意志(自分でできるもん)排泄の制御、更衣
遊技期4-5歳積極性⇔罪悪感目的(目的のための能動的な行動)探検、道具の利用
学童期5-12歳勤勉性⇔劣等感有能感(自分はやればできるんだ)学業、スポーツ
青年期13-19歳同一性⇔同一性拡散忠誠心(自分らしさの確立)自己同一性の獲得(自分とは、どんな人間になりたいか)
成人前期20-39歳親密性⇔孤独愛(深い人間関係)恋愛、婚姻
成人後期40-64歳世代性(生殖性)⇔停滞世話(他者、社会への貢献)仕事、親としての役割
老年期65歳-統合⇔絶望知恵(自分の人生を受け入れる)人生の統合、感謝

50代ですと「成人後期」にあたりますね。
社会や家族への貢献をしながら、次世代に対する責任や、継承を意識するようになります。
そして、「これまでの人生に意味があったのか?」という問いが浮かぶことが出てくる時期に差し掛かるのです。

老年期(65歳~)の課題は、かみ砕いて表現すると

「自分の人生を実りあるものにしたいという思い」 だったり
「自分の人生に対する、自分なりの落としどころを見つけて納得する」

といったことのように思います。

そして、個人的にはですが、この課題は、エリクソンが定義した65歳よりも早く、50代から頭をよぎるように思います。
(あくまでも私の感覚であり、個人差はあると思いますが・・・・)

人生100年時代と言われますが、50歳になった時
「ああ、折り返したんだな・・・」
と感じました。

思秋期をどう乗り越える?

なんとなく、人生折り返し、寂しい雰囲気を醸し出してしまいましたが、
一方で思秋期は新たな「チャンス」でもある、と考えることができるように思います。

思秋期をチャンスととらえるために、例えば以下のようなことをがヒントになるかもしれません。

ヒント①:過去を振り返ることを恐れない
思秋期には、ふと昔の出来事がよみがえることがあります。若い頃の選択、後悔、成功や失敗…。それらを思い出すことは、決してネガティブなことではありません。
心理学では「ライフレビュー(人生の振り返り)」という概念があり、これは老年期の統合性を高めるための重要なプロセスとされています。過去を振り返ることで、自分の価値観や人生の意味を再確認できるのです。
過去は、今の自分を形づくった“素材”です。
それを見つめ直すことで、未来へのヒントが見えてきます。

関連ブログ:モチベーショングラフ ~人生を見直すことで見えてくるもの~

ヒント②:新しい価値観を受け入れる
若さや成功だけが人生の価値ではありません。
社会は「若さ」「成果」「スピード」を重視しがちですが、思秋期はそれらとは違う価値に気づく時期です。
たとえば「深い人間関係」「穏やかな時間」「心の豊かさ」など。
新しい価値観を受け入れることで、
人生の“後半戦”がより豊かで意味あるものになります。

ヒント③:マインドフルネスや瞑想を取り入れる
思秋期は「内面との対話」が深まる時期。そんなときに役立つのが、マインドフルネス(今この瞬間に意識を向けること)です。
瞑想や呼吸法を取り入れることで、過去や未来への不安から少し距離を置き、“今ここ”に集中する力が養われます。
これはストレス軽減にも効果的で、心の安定を保つ助けになります。

ヒント④:人とのつながりを大切にする
孤独を癒すのは、深い人間関係です。
思秋期は、家族構成や職場環境の変化によって、孤独を感じやすい時期でもあります。
そんなときこそ、信頼できる人とのつながりが心の支えになります。
誰かと心を通わせることは、自分自身を癒すことにもつながります。

ヒント⑤:創造性を発揮する
趣味や表現活動が心の栄養になります。
絵を描く、文章を書く、音楽を奏でる、ガーデニングをする…。こうした創造的な活動は、心の深い部分を癒してくれます。
始めるまでに腰が重いこともあるでしょう。
でも、始めてみて「あ、違ったかも・・・」と思ったら、さっさと辞めて次のことにチャレンジすればよいと思います。

ヒント⑥:新しい役割を見つける
中年期は、子育てや仕事の第一線から少しずつ距離を置く時期でもあります。そんなときこそ、新しい役割や使命を見つけることが心の安定につながります。
例えば、地域活動やボランティア、趣味を通じたコミュニティづくり、アルバイト  などなど・・・・
今、中高年の方の間で「リゾートバイト」が流行っていると耳にします。リゾートでの生活を楽しみながら、新しい役割を担う。素敵ですね・・・!

まずは、穏やかな、温かい目で自分自身を見てみる

色々書きましたが、私自身も思秋期だなぁ、と感じていており、上のヒントを実践してみたりしています。
しかし、新しいことを始めたりすることもよいのですが、それなりにパワーが要りますよね。

新たな人間関係を築いたり、新しいコミュニティーに入っていったり、、、

ハードル高いなぁ、と思うこともあると思います。

そんな時はまず、ヒント①(過去を振り返ることを恐れない)②(新しい価値観を受け入れる)③(マインドフルネスや瞑想を取り入れる
が、比較的無理なく取り掛かりやすいように思います。

が、私個人はマインドフルネスや瞑想を取り入れる、が苦手で、試みてもなかなか上手くいきません、、、

「あー、なぜ心静かに、今ここ、に集中できないのだろう」と思ったりするのですが、同時に
「それが私なんだなぁ」と、そんな自分を穏やかな温かい目で見る、ということを最近少し、できるようになりました。

できないことを責めたり落ち込んだりするのではなく、
「ああ、苦手だよね~こういうコト」
という気持ちで、自分をもう一人の自分が見ている感覚。
責めたり、冷ややかな視線ではなく、穏やかな温かい視線で。

そうすると、なんとなく焦りや落ち込みが少し和らいだり、今後の人生が少し違って見えてきたりします。

良かったら、みなさんも試してみてくださいね。

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