部下の話は聴いてきた 自分の話は誰が聴いてくれる?

近年、人材確保の必要性や、人的資本経営の重要性の高まりの中で、社員一人ひとりの声に耳を傾ける取り組みが注目されています。
1on1ミーティングなどを通じて、上司が部下の話を丁寧に聴く機会は格段に増えました。
エンゲージメント向上や心理的安全性の確保が経営課題として語られるという側面においても、組織内の“聴く文化”は着実に根づきつつあります。

管理職や中堅社員として、長年組織を支えてきた方の多くは、「聴く側」としての役割を担ってきた経験があると思います。
部下の悩みや課題に耳を傾け、状況を整理し、必要な判断を下す——それは業務の一部であり、責任ある立場として当然のこととされてきました。

ただ、その一方で——部下の話を聴くことに慣れていても、リーダや管理職であるあなた自身の話をする場は少ないのではないでしょうか。

管理職こそ悩んでいる

コンサルタントマネジメントに従事していた時代に、とある企業様のリーダー研修のサポートをした時の出来事が強く印象に残っています。

その研修は、参加者がワークなどを通じて自己の組織が抱える課題や、自身のリーダーシップについて振り返り、今後のアクションを考えていく、といった内容でした。

30代後半くらいの男性参加者の一人が、ワークの途中から、明らかに元気がなくなり、思い詰めたような表情になって、最後には少し涙ぐんでいたのです。
ビックリして、休憩時間に「大丈夫ですか」とお声がけはしたものの、立場的にも時間的にも、その方に色々とお聴きすることはできませんでした。

あの時、あの男性の心には、どんなことがあったのだろう、ということを、今でもふとした時に思います。
そして、その男性は、あの研修の後に、涙が出るほどに苦しかったことを、誰かに話すことができただろうか、ということが、今でも気になることがあります。

私自身も、リーダーや管理職時代に、ひっそり泣いたり、聴いてほしいなと思ったことが何度かありました。

体の不調も聴いてもらいたいサインかも

管理職は「感情を見せてはいけない」「冷静であるべき」という役割意識が強く、自然と“抑え込む”習慣が身についています。
なので、実際にはストレスがかかっていても、「話したい」「聴いてもらいたい」という思いにならない人も多いように思います。

そうやって抑え込まれた“言語化されていない感情”は、体にも影響を与えます。

私のかつての上司の一人は、いつでもどこでも全力投球の方でした。
難問山積のプロジェクトでリーダーを任されることが多い方で、長時間労働の厳しい環境でしたが、
リーダーとしてやるべきことはこなしつつ、でも、本当にいつも穏やかな笑顔で、何か頼まれると「いいよ~」と応えてくださる方でした。
客観的にみるとブチ切れたくなるような環境でも、いつもそのような態度の方だったので、本当に仏のような方だなぁ、、絶対に真似できない!と思っていました。

ただ、その方はもの凄い腰痛持ちで、酷いときは歩けない程だったのです。
当時は40歳前後、若いとは言えませんが体型もスリムで、腰に負担がかかっている感じもない。
内臓疾患の可能性も含めて、大きな病院で検査もしたそうなのですが、身体的には何も異常は認められなかった。
でも、歩けなくなるほどの腰痛がしばしば起こりました。
おそらく、自覚のないまま、ストレスが身体症状として表れていたのだと思います。

腰痛だけでなく、めまいや頭痛、発疹など、ストレス反応は、心だけでなく身体症状としても表れます。

自分の感情を言語化することの効果

話す、聴いてもらうことによって、どんな効果があるのでしょうか。

『言語を用いた「感情表現」に関する研究の動向』(早稲田大学大学院教育学研究科紀要 別冊 26 号―2 2019 年3月 塚原 望)によると、
言語を用いた感情の表現についてのメンタルヘルスとの関わりについて、以下のように述べられています。

  • 自分の気持ちを言葉で表現できることは,自分の気持ちを客観的に受け止めることになり,その場の状況や自分自身の状態をより正確に把握することにつながる
  • 自身の感情を言語化することによって,不安やストレスの軽減,または怒りの表出の抑制につながる

この研究は教育現場における研究ですが、きっと大人も同じではないかと思います。

感情を言語化することは、自分の気持ちを冷静に受け止めることにつながる。
客観的に把握することで、近視眼的に捉えていたものを少し捉えなおしてみることができたり、
ああ、自分は今こんな風に怒っていたのだな、という風に、自分の感情を自分と切り離す(外在化)ことによって、見えてくるものがある。

言語化することは、話すこと以外に日記をつける、というような手段でも有効なようです。

手段はいくつかると思いますが、いづれにしても、自分の気持ちに気づいて、言語化する、ということが、とても大切なことのようです。

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